鼠径ヘルニア完全ガイド

鼠径ヘルニアQ&A

脱腸とは?症状・原因・放置の危険性を専門医がわかりやすく解説|鼠径ヘルニア

脱腸(医学的には鼠径ヘルニア)は、
腸などの内臓が太ももの付け根(鼠径部)から外に飛び出してくる病気です


太ももの付け根に柔らかい膨らみが出る鼠径ヘルニア(脱腸)の症状を示すイラスト

 はじめに
「鼠径ヘルニア(脱腸)ですね」と医師に言われて、
・今すぐ手術が必要なのか

・放っておいても大丈夫なのか

・命に関わることはあるのか

・痛みは強くなるのか

と、不安になっていませんか?
結論からお伝えすると、
鼠径ヘルニア(脱腸)は、すぐに命に関わることが多い病気ではありません。
しかし、自然に治ることはなく、放置すると


・膨らみが戻らなくなる
・痛みがひどくなり緊急手術が必要

になる可能性があります。

そのため、
「急がなくていいけれど、正しく知っておく必要がある病気」
それが鼠径ヘルニア(脱腸)です。

このページでは、
鼠径ヘルニア(脱腸)の診療に長年携わってきた専門医の立場から、
「今すぐ知っておいてほしいポイント」だけを、できるだけわかりやすく解説します。

鼠径ヘルニア(脱腸)とは?


鼠径ヘルニア(脱腸)とは、足の付け根あたり(鼠径部)の筋膜が薄くなってしまった部分から腸などの内臓物がはみ出てしまう症状のことです。

参照元:Inguinal Hernia(National Institutes of Health)

鼠径ヘルニア(脱腸)は、特別な病気ではありません。
主に中高年男性に多く、3人に1人が一生のうちに経験するといわれています。

原因の多くは「加齢による筋肉のゆるみ」や「腹圧(お腹に力がかかる状態)」です。
重い荷物を持つ仕事や便秘、咳、立ち仕事など、日常の中で少しずつ負担がかかることで発症します。

つまり、「自分のせい」ではありません。
誰にでも起こりうる、ごく一般的な体の変化なのです。
詳しくは鼠径ヘルニアになりやすい人をご覧ください。

進化した人間は立ち上がって2足歩行するようになりました。
そうすると内臓に重みがお腹の下の方にかかるようになりました。
お腹の中の内臓は腹膜に覆われており、その上には筋肉がいくつも重なり合っています。
その筋肉と筋肉の間にはすき間があります。
内臓の重みに押されて、このすき間から腹膜と腸が飛び出してくるのです。
この飛び出した膨らみが「鼠径ヘルニア」(脱腸)です。


鼠径ヘルニア(脱腸)は放置しても大丈夫?
実は、経過を見る人が多い病気です
鼠径ヘルニア(脱腸)は、
横になったり、手で押さえたりすると膨らみが引っ込むことが多く、
痛みがない場合も少なくありません。
そのため、

忙しいから後回し
痛くないから大丈夫
もう少し様子を見ようと、放置されやすい病気です。

ただし「放置=安全」ではありません

鼠径ヘルニア(脱腸)は、時間とともに
膨らみが大きくなったり、戻りにくくなったりすることがあります。

特に注意が必要なのが、
出てしまった腸が戻らなくなり、腸が腐ってしまう「嵌頓(かんとん)」という状態です。


嵌頓になると、
緊急手術が必要になることがあり、日帰り手術ができなくなるケースもあります。

鼠径ヘルニア(脱腸)の種類

鼠径ヘルニア(脱腸)には、主に  
「外鼠径ヘルニア・内鼠径ヘルニア・大腿ヘルニア」 の3つのタイプがあります。

いずれも原因は、加齢よって筋膜が弱くなることが多いのですが、  
腸が飛び出す位置や症状の出方に違いがあります。
どのタイプであっても、自然に治ることはなく、治療の基本は手術です。

▶︎ 外鼠径ヘルニア・内鼠径ヘルニア・大腿ヘルニアの違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

鼠径ヘルニア(脱腸)の原因

小児の場合は先天的な要因、成人の場合は加齢による筋肉の衰えが主な原因と上記でご紹介しました。
成人の場合の加齢による筋肉の衰えについてより詳しくご紹介すると、脱腸が発症する太もものつけ根「鼠径部」には鼠径管という管があります。
鼠径管には男性では精索が、女性では子宮円索などが通っていますが、この鼠径管の周辺の筋肉が加齢によって衰え、筋膜が弱ると鼠径管が開きやすくなってしまいます。
脱腸の多くは、この開きやすくなった鼠径管に腸が入り込むことで起こります。
これが脱腸の原因となるわけです。


◾️関連記事
鼠径ヘルニア(脱腸)の原因とは?

鼠径ヘルニア(脱腸)の症状

加齢とともに鼠径部の壁が弱くなると穴がひらき、中から腹膜が風船のように飛び出します。
この風船のように飛び出した腹膜の中を腸が出入りするのが鼠径ヘルニアの症状です。
鼠径ヘルニア(脱腸)になると太ももの付け根に膨らみを感じます。


それ以外にも鼠径ヘルニア(脱腸)の症状としては、次の内容があげられます。


痛くない鼠径ヘルニア(脱腸)でも治療が必要な理由

痛みの有無と、病気の進行は別です。
「痛くないから大丈夫」と思われがちですが、
痛みがないこと=安全というわけではありません。

鼠径ヘルニア(脱腸)は、
・膨らみが出たり引っ込んだりする
・痛みがほとんどない
この状態でも、内部では少しずつ進行していることがあります。

痛みが出たときは、すでに進行していることも
実際の診療では、

「もっと早く相談していればよかった」

と話される方に、何度も出会います。

痛みが出てから受診すると、
手術の難易度が上がったり、回復に時間がかかることもあります。

鼠径ヘルニア(脱腸)の診断|クリニックでは何をする?

鼠径ヘルニア(脱腸)は、血液検査や難しい検査をしなくても、
「診察(問診・視診・触診)」によって判断できることが多い病気です。

診察では、

・どの位置に膨らみが出るか  
・立ったときと横になったときで変化があるか  
・咳や力みで膨らみが強くなるか  
・手で押すと戻るかどうか  

といった点を確認します。

また、膨らみが小さい場合や、
症状がはっきりしない場合、鼠径ヘルニア(脱腸)であるかどうかの
確認のため
「超音波(エコー)検査」を行い、
鼠径ヘルニアかどうかを詳しく調べます。

エコー検査は痛みがなく、
体への負担もほとんどありません。

「本当に鼠径ヘルニアなのか」
「今すぐ治療が必要なのか」
といった判断も、診察の中で整理されます。

▶︎ 鼠径ヘルニアの診断方法や検査内容については、こちらで詳しく解説しています  

鼠径ヘルニア(脱腸)の危険性について(嵌頓)


鼠径ヘルニア(脱腸)は命に関わることはある?
多くの場合、すぐに命に関わる病気ではありません。

まず安心していただきたいのは、
ほとんどの鼠径ヘルニア(脱腸)は、適切に対応すれば安全に治療できる病気という点です。

ただし「嵌頓」(かんとん)は注意が必要です

放置した結果、嵌頓が起こると、

・腸の血流が悪くなる
・腸が壊死する
・腹膜炎を起こす
といった、命に関わる状態に進行することがあります。

そのため、
「いつか治そう」ではなく、
「正しいタイミングで相談する」ことが大切です。

嵌頓(かんとん)とは、脱出した腸がもとに戻らなくなることです。

この嵌頓という状態になると、腸は脱出口で締め付けられ血流が途絶えます。


その結果、腸は腐り(壊死)、穴が開きます(腸管穿孔)。
その穴から腸の内容物がもれだし、腹腔内(お腹の中)にひろがります。
そして腹膜に炎症が起こり、“腹膜炎”という病態に進行します。

嵌頓になり、重篤な状態まで進行すると緊急手術が必要になり、対応がおくれると命に危険が及びます。
鼠径ヘルニアは“たかが脱腸”と思われがちですが、正しい知識を知ると怖い病気ですね。

鼠径ヘルニア(脱腸)は手術でしか治せません


鼠径ヘルニア(脱腸)は自然に治ることはある?
結論:自然に治ることはありません


鼠径ヘルニア(脱腸)は、
筋膜が弱くなった部分から内臓が飛び出してしまう病気です。
そのため、
・運動(体操)
・筋トレ
・薬
・サプリ
などで元に戻ることはありません。

ヘルニアバンドについて
ヘルニアバンド(脱腸帯)は、
一時的に膨らみを押さえることはできますが、
治療ではなく、あくまで「一時的な対処」です。
根本的に治すためには、
手術による治療が必要になります。

現在では腹腔鏡(ふくくうきょう)を用いた身体に負担の少なく安全な術式が確立されています。
この腹腔鏡を用いる術式を極めていくことで手術を受けたその日に帰宅できる、“日帰り手術”が鼠径ヘルニアの治療分野でも可能となりました。

Gi外科クリニックは腹腔鏡を用いた鼠径ヘルニアの根治術を提供しています。
より安全でより身体への負担が少ない術式を検討し、通常の腹腔鏡法をもう一段階進化させた治療を行っています。
それが、お臍の中に1カ所だけ穴をあけて手術を行う、“単孔式腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術(SILS-TEP法)”です。

詳しくは鼠径ヘルニアの治療をご覧ください。
参照元:Inguinal hernia repair

鼠径ヘルニア(脱腸)の手術方法について
鼠径ヘルニア(脱腸)の治療は、基本的に手術が必要です。  
手術にはいくつかの方法があり、代表的なものとして

- 鼠径部を切開して行う方法  
- 腹腔鏡(小型カメラ)を用いて行う方法  
があります。

患者さんの状態やヘルニアのタイプによって、適した方法は異なります。
▶︎ 鼠径ヘルニア手術の種類や、それぞれの特徴については、こちらの記事で詳しく解説しています。


なぜ「様子見」で後悔する人が多いのか
診療の現場では、
・仕事が忙しかった
・入院が必要だと思っていた
・手術が怖かった
・日常生活で特に困ってなった

という理由で、治療を先送りにしていた方が多くいらっしゃいます。
しかし実際には、

・本当に日帰りで治療できた
・思っていたより体への負担が少なかった
・もっと早く知っていればよかった

と話される方がほとんどです。

「知った今」が、いちばん良いタイミングです

鼠径ヘルニア(脱腸)は、
・我慢する病気ではありません
・放置して先送りにしてもよくなる病気でもありません

正しく知り、適切なタイミングで治療すれば、
日常生活に大きな支障を残さずに治すことができます。


悩みや不安を抱え続けるより、
まずは一度、専門医の説明を聞いてみてください。

手術後の生活について

鼠径ヘルニア(脱腸)の手術後は、  
多くの方が比較的早く日常生活に戻ることができます。

ただし、手術方法や体調によって  
仕事復帰や運動再開のタイミングには個人差があります。

▶︎ 手術後の過ごし方や注意点については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。

まとめ

鼠径ヘルニア(脱腸)は、決して珍しい病気ではありません。
ただ、「痛くない=大丈夫」ではないということを、ぜひ覚えておいてください。

早めに正しく治療すれば、
手術の負担も少なく、翌日から普段どおりの生活に戻れます。

放置して不安を抱えるより、
「今知れた自分」を褒めてあげてください。
それが、最も安全で、賢い選択だと思います。

この記事では、「鼠径ヘルニア(脱腸)とは?」についてご紹介しました。

鼠径ヘルニア(脱腸)に関する無料相談受付中!


気になる症状がある方は、お気軽にGi外科クリニックまでご相談ください。
専門の外科医が丁寧に対応いたします。

※この記事は「鼠径ヘルニア(脱腸) とは」のキーワードでの検索ニーズに応えるため、医師監修のもと作成しています。

この記事を監修した人


日本外科学会専門医/日本外科学会指導医/日本消化器外科学会認定医/日本ヘルニア学会鼠径部ヘルニア習得医
年間1000人以上の鼠径ヘルニア手術を担当および監修。安全で体へのダメージや再発が非常に少ない術式〈単孔式腹腔鏡下鼠径(そけい)ヘルニア根治術(SILS-TEP法)〉を行う日本有数のドクター。
外科医向けの鼠径ヘルニア手術の教科書を多数執筆する他、主な著書に『1日で治せる 鼠径ヘルニア読本』 合同出版/2024年2月刊/『ヘルニアの外科』(共著) 南江堂/2024年10月刊などがある。

Gi外科クリニック理事長・医師 池田 義博(鼠径ヘルニア界のトップドクター)

Gi外科クリニックへご相談ください

鼠径ヘルニア専門クリニック「Gi外科クリニック」では、岡山院(岡山市)、京都院(京都市四条烏丸)、阪神院(西宮市西宮北口)で中四国、関西を中心に鼠径ヘルニアの患者さんを治療しています。

鼠径ヘルニアという病気は、放置しておくと時に命に危険が及ぶ「嵌頓(かんとん)」を起こす可能性があります。
そのため、鼠径ヘルニアの症状がある場合は痛みの有無に関わらず、早期治療をおすすめします。

鼠径ヘルニアの症状がある方はお気軽に当院を受診ください。

受診予約はこちらから

24時間365日受付中!

また受診はためらうけど症状が気になる方のための無料相談窓口も設けています。
無料相談窓口では、鼠径ヘルニアに詳しい当院の看護師がご対応致します。

気になることがございましたら、お気軽にご相談ください。

そけいヘルニア無料相談ダイヤル

通話無料 携帯OK
0120-373-615

受付時間/9:00〜18:00
(月曜〜金曜・土日を除く祝日)

この記事をシェアする