鼠径部はどこ?違和感や痛み、ふくらみがあるときの受診目安
鼠径部(そけいぶ)は、お腹と太ももの境目にある、左右の脚の付け根のあたりです。
この場所に違和感やふくらみ、しこりがあり、様子を見てよいのか受診したほうがよいのか迷っている方に向けて、
鼠径部の位置と、症状から考えられる原因、受診の目安を解説します。
当院は鼠径ヘルニア(脱腸)を専門とする外科クリニックで、受診者の多くが「脚の付け根の違和感」を理由に来院されています。
急に強い痛みが出た場合や、ふくらみが戻らなくなり吐き気・嘔吐を伴う場合は、この記事を読み終える前に救急外来を受診してください。
鼠径部に痛みや違和感、ふくらみがある方へ(まずここを確認してください)
上の図の赤いライン周辺が「鼠径部」と呼ばれる場所です。
次の状態に当てはまる場合は、一度状態を確認しておくと、今後どうするかを落ち着いて判断できます。
■ よくある状態
・押すと戻るふくらみがある
・立ったときや力を入れたときに出てくる
・横になると気にならなくなる
・なんとなく違和感が続いている
これらは鼠径ヘルニア(脱腸)で典型的にみられる状態です。
ただし、鼠径部にはほかにもいくつかの病気が起こるため、症状だけで病気を決めつけることはできません。
以下で、鼠径部の位置、原因として考えられる病気、受診の目安を順に説明します。
鼠径部(そけいぶ)とはどこ?位置と構造を確認しましょう
鼠径部とは、脚の付け根(太ももの付け根)から下腹部にかけての部分を指します。
お腹と太ももがつながる境目のエリアで、左右に1か所ずつあり、男性にも女性にも同じ位置にあります。
鼠径部の位置
脚の付け根にできる斜めのくぼみ(鼠径溝)の内側にある三角形のエリアで、恥骨の左右外側、股関節の前方に位置します。
「太ももの付け根」「下腹部の左右の端」と言い換えると、場所をイメージしやすくなります。
筋肉・血管・神経・リンパ管が集まっており、立つ・力む・持ち上げるといった動作でお腹の中の圧力が高まると、負担が集中しやすい場所です。
鼠径部の構造(鼠径靭帯と鼠径管)
鼠径部の下側には鼠径靭帯(そけいじんたい)があり、その内側寄りを鼠径管(そけいかん)という短い管が通っています。
鼠径管は腹壁の内と外をつなぐ通り道で、男性では精索(精巣につながる血管・神経・精管の束)、女性では子宮円索(子宮を支える組織)などが通ります。
この通り道があることが腹壁の弱点になり、鼠径ヘルニアが起こりやすい理由のひとつです。
「鼠径」という名前の由来
「鼠径」の「鼠」はネズミを指します。
男性では出生前に精巣がお腹の中から陰嚢へ下りてきますが、この動きがネズミの通り道のようだと例えられたことが名前の由来とされています。
医療機関では「そけいぶ」と読みますが、一般には「足の付け根」「股の付け根」と呼ばれることが多い場所です。
鼠径部と股関節の違い
鼠径部は体の表面の「場所」を表す言葉で、股関節は骨盤と太ももをつなぐ「関節」の名前です。
股関節は鼠径部の奥にあるため、股関節の病気でも鼠径部に痛みを感じることがあります。
ふくらみがなく、歩く・立ち上がるときに痛む場合は、股関節が原因の可能性も考えます。
参考:日本整形外科学会「変形性股関節症」
鼠径部に痛み・しこり・ふくらみが出る主な原因
鼠径部の症状は「ふくらみ・しこりがあるか」「押すと戻るか」「痛みや熱感があるか」によって、考えられる病気が変わります。
中高年の方で最も多いのは鼠径ヘルニア(脱腸)ですが、それ以外の病気も含めて主なものを説明します。
見た目や触った感じだけで病気を判断することはできないため、最終的な診断は医師の診察が必要です。
鼠径ヘルニア(脱腸)― 中高年に最も多い原因
鼠径ヘルニアは、腹壁の筋膜にできたすき間(ヘルニア門)から、腹膜や腸、脂肪の一部が皮膚の下に出てしまう病気です。
立ったときや力を入れたときに鼠径部がふくらみ、横になったり手で押したりすると引っ込むのが典型的な特徴です。
初期には痛みがほとんどなく、「違和感」「重たい感じ」「軽いふくらみ」として気づく方が多くを占めます。
加齢で腹壁の筋膜が弱くなることが主な原因で、40代以上の男性に多くみられますが、女性やお子さんにも起こります。
参考:国立健康危機管理研究機構「鼠径ヘルニアとは」
ふくらみが引っ込んでも、原因となるすき間が治ったわけではありません。
出たり引っ込んだりする症状があれば、外科で相談してください。
▶ 鼠径ヘルニア(脱腸)とは?どんな病気かを詳しく見る
▶ 鼠径ヘルニアの原因は?発症の仕組みとなりやすい人
鼠径部のリンパ節の腫れ
鼠径部にはリンパ節が集まっており、脚や陰部の傷・感染症などをきっかけに腫れることがあります。
皮膚の下にコリコリしたしこりとして触れ、押すと痛むこともあります。
感染が原因の場合は、原因が治まれば腫れも引くことがほとんどです。
ただし、しこりが硬い、大きくなる、なかなか小さくならない、発熱や体重減少を伴う場合は、別の病気の可能性があるため受診が必要です。
皮膚の下のしこり・膿のたまり(粉瘤・脂肪腫・膿瘍)
皮膚の下に袋状の組織ができて老廃物がたまる粉瘤(ふんりゅう)や、脂肪のかたまりである脂肪腫は、鼠径部にもできます。
やわらかく動くしこりで、通常は痛みがありません。
一方、細菌感染で膿がたまる膿瘍(のうよう)は、赤く腫れて熱を持ち、痛みを伴います。
赤みが広がる、発熱する、痛みが強くなる場合は当日中に皮膚科などを受診し、しこりを自分でつぶすことは避けてください。
鼠径ヘルニアとの違いは、立つ・横になるで大きさが変わらない点です。
血管のふくらみ(静脈瘤・動脈瘤)
鼠径部を通る静脈に血液がたまってコブ状にふくらむ静脈瘤は、下肢静脈瘤の一種で、長時間の立ち仕事や妊娠などで起こりやすくなります。
姿勢や時間帯でふくらみの大きさが変わる点は鼠径ヘルニアと似ていますが、太ももやふくらはぎの血管の浮き出しを伴うのが特徴です。
動脈瘤はまれですが、ふくらみに拍動を感じる場合は早めの受診が必要です。
ヌック管水腫(女性にみられるふくらみ)
ヌック管水腫は、女性の鼠径部にある「ヌック管」という本来閉じるはずの管が残り、液体がたまってふくらむ病気です。
20〜40代の女性に多く、鼠径ヘルニアとよく似たふくらみができますが、手で押しても引っ込みません。
手術で治療する病気で、鼠径ヘルニアと同じく外科で診断・治療を行います。
筋肉や股関節のトラブル(ふくらみを伴わない痛み)
ふくらみやしこりがなく、歩く・走る・脚を開くといった動作で痛む場合は、股関節や筋肉・腱の問題が原因のこともあります。
スポーツをする方では、鼠径部周辺の筋肉や腱に負担がかかって痛みが続く「鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)」が知られています。
歩き始めや立ち上がるときに痛む、脚を動かしにくいといった症状が続く場合は、整形外科で相談してください。
症状から見る原因の目安
| 症状の特徴 | 考えられる主な原因 |
|---|---|
| 立つ・力むと出て、横になると引っ込むふくらみ | 鼠径ヘルニア(脱腸) |
| 押しても引っ込まないふくらみ(女性) | ヌック管水腫 |
| コリコリしたしこり、押すと痛い | リンパ節の腫れ |
| 赤く腫れて熱を持ち、痛い | 膿瘍(感染) |
| やわらかく動くしこり、痛みなし | 粉瘤・脂肪腫 |
| 拍動を感じるふくらみ | 動脈瘤 |
| ふくらみはなく、動作で痛む | 股関節・筋肉の問題 |
※あくまで目安です。症状だけで原因を特定することはできないため、診断は医師の診察で確認してください。
鼠径部の症状は様子を見てもよい?受診の目安
受診の緊急度は、痛みの強さよりも「ふくらみが戻るか」「吐き気や腹痛を伴うか」で判断します。
緊急度の高い順に説明します。
すぐに受診が必要な症状(嵌頓の疑い)
次の症状がある場合は、通常の予約日を待たず、救急外来などで診察を受けてください。
- 鼠径部に急な強い痛みがある
- 以前は引っ込んでいたふくらみが、戻らなくなった
- ふくらみが急に大きくなった、赤くなった
- ふくらみに腹痛・吐き気・嘔吐・お腹の張りが伴う
これは、飛び出した腸がヘルニア門に挟まって戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」の可能性がある状態です。
嵌頓は腸閉塞や腸の壊死につながることがあり、緊急手術が必要になります。
ふくらみを無理に押し戻そうとせず、受診してください。
参考:関西ろうさい病院「ヘルニア外科」
また、男性で精巣や陰嚢に突然強い痛みが出た場合は、急いで治療が必要な別の病気の可能性があります。
鼠径ヘルニアと自己判断せず、すぐに救急外来を受診してください。
早めに外来で相談したい症状
強い痛みがなくても、次のような場合は受診してください。
- 立ったときや、お腹に力が入ったときにふくらむ
- 横になると引っ込むふくらみを繰り返している
- 違和感や痛みが続いている、または繰り返す
- しこりが消えない、以前より大きくなっている
- 以前より症状がはっきりしてきた
痛みの強さだけでは、原因や治療の必要性を判断できません。
当院では、こうした症状をきっかけに受診される方が非常に多く、受診者の約9割が「鼠径部の違和感」を主な理由として来院されています。
「まだ大丈夫なのか」「一度診てもらった方がよいのか」と迷う段階で受診していただいて問題ありません。
軽い違和感が一時的に出た場合
運動後などの軽い違和感が休むと改善し、ふくらみ・しこり・発熱もなければ、負担のかかる動作を控えて経過を確認することはあります。
ただし、症状が続く、繰り返す、悪化するときは受診してください。
ふくらみが見えないことだけで、病気がないとは判断できません。
鼠径部の症状は何科を受診すればよい?
ふくらみ・違和感がある場合は、外科(消化器外科)の受診が基本です。
緊急の症状がない場合は、次を目安にしてください。
| 主な症状 | 受診先の目安 |
|---|---|
| 立つと出てくるふくらみ、出たり引っ込んだりするふくらみ | 外科・消化器外科・鼠径ヘルニア外来 |
| 歩くと痛む、脚を動かすと痛む、股関節を動かしにくい | 整形外科 |
| 皮膚の表面に近いしこり、赤み、膿 | 皮膚科 |
| 精巣や陰嚢の腫れ・違和感 | 泌尿器科 |
| 原因がわからないしこり、受診先に迷う症状 | かかりつけ医・内科・総合診療科 |
鼠径ヘルニアやヌック管水腫、皮膚の下のしこりは外科で診断できます。
どこに行けばよいか迷う場合は、まず外科を受診すれば、必要に応じて適切な診療科を案内してもらえます。
受診時には「いつから」「左右のどちらに」「どのような動作で症状が出るか」を伝えると、診察の参考になります。
鼠径ヘルニアが疑われる場合は、立った状態で患部を見たり触れたりして確認し、必要に応じて超音波検査などでほかの病気との違いを調べます。
▶ 鼠径ヘルニアは何科を受診すればいい?外科での診察と検査の流れ
鼠径ヘルニアだった場合、すぐに手術が必要?
成人の鼠径ヘルニアは自然に治ることがなく、根本的な治療は手術です。
ただし、診断された方全員がその場ですぐに手術を受けるわけではありません。
よくある疑問に答えます。
痛くなければ様子を見ていい?
痛みの有無は、受診の必要性を判断する基準にはなりません。
鼠径ヘルニアは痛みが少ない、または痛くないまま進行することが多い病気です。
放置するとふくらみが大きくなり、日常生活に支障が出たり、嵌頓のリスクが高まったりします。
早い段階で状態を把握しておくことで、治療の選択肢やタイミングを落ち着いて考えることができます。
自然に治ることはある?
鼠径ヘルニアは自然に治ることはなく、薬や運動で治すこともできません。
ヘルニアバンドなどで押さえる方法もありますが、根本的な治療にはならず、日常生活で常に押さえ続けることは現実的ではありません。
参考:川崎医科大学附属病院「鼠径ヘルニアの治療について」
症状がほとんどない場合は、医師と相談しながら定期的に診察を受けて経過をみることもあります。
自己判断で放置することとは異なり、症状の変化や受診のタイミングを医師と確認しておくことが前提です。
女性でも鼠径部の病気になる?
鼠径ヘルニアは男性に多い病気ですが、女性にも起こります。
女性の場合はヌック管水腫や、太ももの付け根のやや下側に出る大腿ヘルニアなど、男性とは異なる病気も考えられます。
大腿ヘルニアは嵌頓を起こしやすいため、女性で鼠径部のふくらみに気づいた場合も、痛みが少なくても早めに外科で確認してください。
参考:倉敷成人病センター「鼠径ヘルニア」
次にどうすればいいか?
鼠径部の違和感が気になっている方は、
「今すぐ手術が必要か」ではなく、
「一度、専門医に状態を確認してもらうべきか」
という視点で考えてみてください。
診察を受けることで、治療が必要か、どのような方法や時期が適しているかを相談できます。
「もし手術になったら入院が必要なのでは」と不安に感じる方も少なくありません。
実際には、鼠径ヘルニア(脱腸)の治療には
【入院をせず、日帰りで行う手術という選択肢】もあります。
日帰り手術が適しているかは、診察や検査で確認したうえで判断します。
なお、強い痛みや嘔吐、戻らなくなったふくらみがある場合は、通常の予約や問い合わせの返答を待たず、救急外来を受診してください。
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※この記事は「鼠径部」のキーワードでの検索ニーズに応えるため、医師監修のもと作成しています。
また、当院における過去の受診データ(初診時の主訴)をもとにしています。
この記事を監修した人
日本外科学会専門医/日本外科学会指導医/日本消化器外科学会認定医/日本ヘルニア学会鼠径部ヘルニア習得医
年間1000人以上の鼠径ヘルニア手術を担当および監修。安全で体へのダメージや再発が非常に少ない術式〈単孔式腹腔鏡下鼠径(そけい)ヘルニア根治術(SILS-TEP法)〉を行う日本有数のドクター。
外科医向けの鼠径ヘルニア手術の教科書を多数執筆する他、主な著書に『1日で治せる 鼠径ヘルニア読本』 合同出版/2024年2月刊/『ヘルニアの外科』(共著) 南江堂/2024年10月刊などがある。
Gi外科クリニック 理事長・医師 池田 義博
Gi外科クリニックへご相談ください
鼠径ヘルニア専門クリニック「Gi外科クリニック」では、岡山院(岡山市)、京都院(京都市四条烏丸)、阪神院(西宮市西宮北口)で中四国、関西を中心に鼠径ヘルニアの患者さんを治療しています。
鼠径ヘルニアという病気は、放置しておくと時に命に危険が及ぶ「嵌頓(かんとん)」を起こす可能性があります。
そのため、鼠径ヘルニアの症状がある場合は痛みの有無に関わらず、早期治療をおすすめします。
鼠径ヘルニアの症状がある方はお気軽に当院を受診ください。
24時間365日受付中!
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カテゴリ:鼠径ヘルニア




