鼠径ヘルニア完全ガイド

鼠径ヘルニア

鼠径ヘルニアはどんな痛み?痛む場所や痛み方、強くなる場面

鼠径ヘルニアの痛みは、足の付け根の違和感や重苦しさ、鈍い痛みとして現れることが多く、痛みをほとんど自覚しない人もいます。

この記事は、足の付け根の違和感や痛みが鼠径ヘルニアによるものか気になり、痛みが軽いまま様子を見てよいのか迷っている方に向けた内容です。

鼠径ヘルニアでみられる痛み方、痛む場所、痛みが強くなる場面を整理し、様子を見ずに受診したい痛みの変化も紹介します。

自分の症状と照らし合わせ、医師に伝える内容をまとめる材料として役立ててください。

鼠径ヘルニアの痛みは違和感や鈍い痛みが多い

鼠径ヘルニアの痛みは、足の付け根の違和感や鈍い痛みとして感じられることが多く、鋭い痛みや強い痛みを必ず伴うわけではありません。

症状の現れ方には個人差があり、膨らみがあるだけの人から、違和感や痛みを訴える人までさまざまです。

感じ方も一様ではなく、引っ張られるような感覚や重苦しさのほか、チクチク・ピリピリとした刺激感を訴える人もいます。

ただし、足の付け根の痛みは股関節や筋肉、神経の病気などでも起こるため、痛みの種類だけで鼠径ヘルニアかどうかは判断できません。

膨らみなど痛み以外の初期症状は、鼠径ヘルニアの初期症状を解説した記事で詳しく紹介しています。

引っ張られるような痛みや重苦しさを感じることがある

鼠径ヘルニアでは、足の付け根が引っ張られるような感覚や、重いものが下がっているような不快感を覚える人がいます。

鋭く刺すような痛みではなく、鈍い痛みや圧迫感、つっぱり感として表れることも少なくありません。

不快感が軽い場合は、本人が「痛み」として意識していないこともあります。

訴え方も人によって異なり、「違和感がある」「重苦しい」「つっぱる感じがする」「だるい」などさまざまです。

医師に症状を伝える際は、痛みの強さだけでなく、「引っ張られる感じ」「重いものがぶら下がっている感じ」のように、感覚を具体的な言葉で説明すると、診察で症状を確認しやすくなります。

いつごろから感じているのか、症状が続いているのか時々出るのかも、あわせて伝えたい情報です。

チクチク・ピリピリとした痛みが出る場合もある

足の付け根にチクチク刺すような痛みや、ピリピリとした刺激感を訴える人もいます。

焼けるような感覚として表現されることもあり、海外の医学誌の総説では、鼠径ヘルニアの症状として灼熱感やうずくような痛みが挙げられています。

こうした痛みには、ヘルニアの周囲の組織や、鼠径部を通る神経への刺激が関係している可能性があります。
ただし、痛み方だけで原因を特定することはできません。

チクチク・ピリピリとした痛みは鼠径ヘルニアに特有の症状ではなく、腰椎椎間板の病気、鼠径部の神経が圧迫される病気、太ももの付け根の筋肉や腱の損傷、股関節の病気などでも起こります。

スポーツをする人では、膨らみがないまま鼠径部が痛む病気(スポーツヘルニア)もあり、症状だけでは鼠径ヘルニアとの区別が難しい場合があります。

同じような痛みが続く場合は、痛む範囲、膨らみの有無、どのような動作のときに痛むかを医師に伝えると、原因を調べる手がかりになります。

痛みの強さには個人差があり痛みがないこともある

痛みの程度には個人差があり、軽い違和感だけの人もいれば、仕事や家事に支障を感じるほど痛む人もいます。

一方で、膨らみがあっても痛みをほとんど感じない人や、症状を自覚しないまま過ごしている人もみられます。

痛みがないからといって、鼠径ヘルニアがないとは限りません。

痛みの強さだけで、病状の進み具合や緊急性を見極めるのは困難です。

膨らみの大きさと痛みの強さも、必ずしも比例しません。

チリで鼠径ヘルニアの手術を目的に受診した693人を対象とした2008年の研究では、痛みの頻度や強さに、ヘルニアの大きさ(大・中・小)による有意な差はみられませんでした。

大きな膨らみがあっても痛みが少ない人がいる一方で、小さな膨らみでも強い痛みを感じる人もいます。

痛む場所は足の付け根から下腹部にかけて

鼠径ヘルニアに伴う痛みや違和感は、主に足の付け根(鼠径部)に現れ、下腹部などに広がる場合もあります。

鼠径部とは、お腹と太ももの境目にある溝の周辺を指します。

鼠径ヘルニアは、この部分の腹壁の弱いところから、腹膜とともに腸などが皮膚の下に押し出される病気です。

痛む位置は、ヘルニアが出ている場所や大きさ、周囲の組織の状態によって異なります。

ただし、足の付け根から下腹部にかけての痛みは、股関節や筋肉、腸、泌尿器の病気などでも起こるため、痛む場所だけで鼠径ヘルニアと判断するのは困難です。

膨らみのある足の付け根を中心に痛む

鼠径ヘルニアの痛みや違和感は、お腹と太ももの境目にあたる足の付け根付近に出ることが多く、膨らみがある場合は、膨らみそのものやその周辺に圧迫感や鈍い痛みを覚える人もいます。

鼠径ヘルニアは右側にも左側にも起こり、左右両側に生じる場合もあります。

片側だけに症状がある場合も、反対側に膨らみや違和感がないかを確認しておくと、診察時に伝えやすくなります。

膨らみがある場所と痛みを感じる場所は、完全に一致するとは限りません。

膨らみの周囲を広く痛むように感じたり、痛みの中心がはっきりしなかったりすることもあります。

医師に伝える際は、痛む位置を指で示せるか、膨らみとの位置関係はどうか、左右のどちらか両側かを整理しておくと役立ちます。

下腹部に重苦しさを感じることがある

足の付け根だけでなく、下腹部に重苦しさや引っ張られるような不快感を覚える人もいます。

鼠径部と下腹部は位置が近いため、ヘルニア周辺の不快感が、下腹部の違和感として自覚される場合があると考えられます。

一方、下腹部の痛みは、虫垂炎や大腸憩室炎などの腸の病気、膀胱炎などの尿路感染症、男性では前立腺炎、女性では子宮や卵巣の病気でも起こります。

発熱、下痢、排尿時の痛み、不正出血などを伴う場合は、鼠径ヘルニア以外の原因も考えられるため、自己判断は避けてください。

痛む位置がはっきりしない場合は、「へその下あたり全体」「足の付け根から少し上」など、不快感のある範囲を医師に伝えると、診察で確認する範囲を絞り込む参考になります。

陰嚢や太ももの内側に痛みが広がる場合もある

男性では、足の付け根から陰嚢にかけて痛みや違和感が広がる場合があります。

ヘルニアが大きくなり、腸などが陰嚢まで下がっているときは、陰嚢の腫れとともに、その周辺に痛みや不快感が出る人もいます。

鼠径部には、足の付け根の内側や陰嚢、太ももの内側の感覚を担う神経が通っており、この神経が刺激されると太ももの内側に痛みを感じる場合があります。

ただし、太ももの内側の痛みは、鼠径ヘルニアの典型的な症状とは限りません。

陰嚢や太ももの内側の痛みは、精巣や精巣上体の病気、腰の神経の病気、股関節や筋肉の問題などでも起こります。

とくに陰嚢が突然強く痛む場合は、精巣捻転など早急な治療が必要な病気の可能性があるため、様子を見ずにすぐ医療機関を受診してください。

鼠径ヘルニアで痛みが出る仕組み

鼠径ヘルニアの痛みには、飛び出した組織が周囲を圧迫したり引っ張ったりすることや、鼠径部を通る神経への刺激などが関係すると考えられています。

腸などが飛び出すこと自体で必ず痛むわけではなく、膨らみがあっても痛みを感じない人もいます。

痛みの有無や強さは、ヘルニアの周りにある筋膜や結合組織、神経がどの程度影響を受けるかによって変わる可能性があります。

ただし、痛みが生じる仕組みには個人差があり、痛み方だけでどの組織が原因になっているかを特定することはできません。

飛び出した組織が周囲に圧力をかけて痛みが生じる

鼠径ヘルニアでは、腹膜に包まれた腸や脂肪組織が鼠径部へ押し出され、周囲の筋膜や結合組織に圧力や引っ張る力がかかる場合があります。

内容物が飛び出す出口(ヘルニア門)やその周辺の組織が引き伸ばされたり傷ついたりすることで、うずくような痛みや灼熱感が生じると説明されています。

こうした周囲の組織への負担は、つっぱり感や圧迫感、鈍い痛みとして自覚されることもあると考えられます。

一方で、膨らみの大きさと痛みの強さは必ずしも一致しません。

小さなヘルニアでも痛みを感じる人がいる反面、大きく膨らんでいても痛みが少ない人もいます。

組織への圧迫や引っ張りは痛みを説明する仕組みの一つにすぎず、すべての人に同じように起こるわけではないのです。

鼠径部の神経への刺激が痛みに関係する場合もある

鼠径部には、足の付け根や陰嚢、太ももの内側などの感覚を担う神経が通っています。

腸骨鼠径神経もその一つで、ヘルニアや周囲の組織の状態によっては、こうした神経が圧迫や刺激を受ける場合があります。

米国の医療機関で行われた143件の鼠径ヘルニア手術を対象とした2019年の研究では、腸骨鼠径神経が太く腫れている人ほど手術前の痛みが強い傾向がみられ、神経の圧迫による障害が痛みに関係している可能性が示されました。

鼠径部の神経が関係する痛みは、焼けるような痛みや皮膚の感覚の変化として現れることがあり、チクチク・ピリピリとした刺激感の背景になっている可能性も考えられます。

ただし、鼠径ヘルニアの痛みがすべて神経への刺激で起こるわけではなく、痛み方だけで神経の障害の有無は判断できません。

神経が関係する痛みは、腰の病気や手術後の後遺症など、鼠径ヘルニア以外の原因でも起こります。

原因を確かめるには、医師による診察が欠かせません。

痛みが強くなりやすい動作や場面

鼠径ヘルニアに伴う痛みや違和感は、姿勢や動作によって変化し、お腹に力がかかる場面で強まる傾向がみられます。

咳やいきみ、重い物の持ち上げなどで腹圧が高まると、腹部の内容物がヘルニアの出口から押し出され、膨らみが大きくなることがあります。

足の付け根の痛みや圧迫感は、咳やいきみ、物を持ち上げる動作、運動などで悪化しやすいとされています。

長時間立っていた日の終わりや、長く活動した後に症状が目立つ人もいます。

こうした場面で痛みが強まることは鼠径ヘルニアを疑う手がかりになるものの、股関節や筋肉の病気でも動作に伴って痛みが出るため、それだけで診断はできません。

長時間立ったり歩いたりしたとき

長時間立っていると、重力と腹圧の影響で鼠径部の膨らみが目立ち、痛みや違和感が強まる場合があります。

鼠径ヘルニアの膨らみは、立ったときやお腹に力を入れたときに大きくなるとされています。

長い距離を歩いた後や、立ち仕事が続いた後に、足の付け根の重苦しさやつっぱり感を覚える人もいます。

立ったり歩いたりすると痛む病気は、鼠径ヘルニアだけではありません。

変形性股関節症などの股関節の病気や、太ももの付け根の筋肉や腱の損傷でも、似た症状が出ることがあります。

痛みが出るまでにどのくらい立っていたか、どのくらい歩いたか、休むと症状が軽くなるかを把握しておくと、診察時に普段の様子を伝えやすくなります。

咳やくしゃみ、排便時にいきんだとき

咳やくしゃみ、排便時のいきみでは、お腹の中に一時的に強い圧力がかかります。

腹圧が急に上がると、腹部の内容物がヘルニアの出口へ押し出されて膨らみが大きくなったり、周囲の組織への負担が増えたりして、足の付け根に痛みや違和感が出る場合があります。

咳をしたときに足の付け根が盛り上がるのを感じる人もおり、医師の診察でも、咳やいきみをしてもらいながら膨らみの有無を確かめます。

慢性的に咳が続く病気や便秘がある場合は、同じような腹圧の上昇が日常的に繰り返されます。

ただし、腹圧が高まる動作で足の付け根が痛んだからといって、鼠径ヘルニアと確定できるわけではありません。

咳やくしゃみの直後に痛むのか、排便のたびに痛むのかなど、症状が出る状況を具体的に医師へ伝えると診察の参考になります。

重い物を持ったときや運動中

重い荷物を持ち上げたり、筋力トレーニングで強く踏ん張ったりすると、息を止めて力を入れることで腹圧が上がります。

腹圧の上昇によって鼠径部の膨らみや周囲への負担が変化し、運動中や運動後に痛みが出る人もいます。

ポーランドで鼠径ヘルニアの手術を控えた1,647人を調べた2018年の研究では、安静時に痛みや違和感があった人は約6割でしたが、体を動かしているときには9割以上にのぼりました。

痛みが出やすい場面としては、仕事中の動作や階段の上りが多く挙げられています。

ただし、すべての運動で痛みが強まるわけではありません。

運動の種類や負荷の大きさ、ヘルニアの状態によって、症状の出方は異なります。

どの運動や作業で、どの程度の負荷をかけたときに痛むのかを把握しておくと、医師に症状を伝える際の手がかりになります。

一日の活動によって夕方に痛みが強まることもある

朝は症状が少なくても、日中の活動を経た夕方になると、足の付け根の痛みや違和感を覚える人がいます。

鼠径ヘルニアでは、重苦しさや引っ張られるような感覚が、一日の終わりや長時間の活動の後に強まることがあると報告されています。

立ったり歩いたりする活動が積み重なることで、鼠径部の膨らみや周囲の組織への負担が変化する可能性があります。

ただし、夕方に症状が強まるのはすべての鼠径ヘルニアに共通する特徴ではなく、時間帯だけで病気の有無や進行の程度は判断できません。

症状が出る時間帯を記録しておくと、診察時に普段の経過を伝える手がかりになります。

横になると痛みが和らぐことがある理由

立っているときに出ていた足の付け根の痛みや違和感は、横になって休むと軽くなる場合があります。

鼠径ヘルニアの膨らみは、横になったり手で押し込んだりすると引っ込むことが多く、それに伴って周囲への負担が減ると考えられます。

ただし、横になれば必ず痛みが治まるわけではなく、休んでも痛みが続く場合はほかの原因も考える必要があります。

また、痛みが軽くなっても、鼠径ヘルニアそのものが治ったわけではありません。

鼠径ヘルニアは自然に治る病気ではなく、症状が和らいでいる間も腹壁の弱い部分は残っています。

横になると膨らみが戻り周囲への負担が減ることがある

横になると、立っているときにかかっていた重力の影響が小さくなり、鼠径部に圧力がかかりにくくなります。

その結果、鼠径部に飛び出していた腸や脂肪組織などが、お腹の中へ自然に戻る場合があります。

飛び出した組織が戻ると、周囲の筋膜や結合組織への圧迫や引っ張りが軽くなり、痛みや違和感が和らぐと考えられます。

ここでいう「戻る」とは、横になったときに膨らみが自然に引っ込むことを指します。

膨らみを自分の手で強く押し戻そうとするのは避け、横になっても膨らみが引っ込まない場合は医療機関に相談してください。

膨らみや痛みが一時的に軽くなっても、腹壁の弱い部分がふさがったわけではありません。

立ち上がって活動すれば再び膨らみが出ることが多く、横になって休むことは根本的な治療とは異なります。

横になっても痛みが続く場合はほかの原因も考える

横になって休んでも足の付け根の痛みが続く場合は、鼠径ヘルニア以外の病気や、筋肉・関節・神経の問題が関係していることも考えられます。

一方で、鼠径ヘルニアでも、姿勢にかかわらず痛みが続く人がいます。

米国で行われた研究では、手術前に「ほとんどの時間痛む」と答えた人ほど、鼠径部の神経が太く腫れている傾向が報告されています。

横になっても痛むという理由だけで、鼠径ヘルニアを否定することはできません。

横になっても膨らみが引っ込まず、痛みが強まっている場合は、「様子を見ずに受診したい痛みの変化」の項目を確認してください。

休んでいても痛みが続くときは、痛む場所、膨らみの有無、いつから痛むか、痛みが強まっているかなどを医師に伝え、原因を確かめてもらうことが勧められます。

足の付け根の痛みの原因は鼠径ヘルニアに限らないため、診察を受けないまま自己判断で放置しないようにしましょう。

膨らみがないのに足の付け根が痛む場合に考えられる病気

足の付け根が痛むのに見た目に膨らみがない場合、原因は鼠径ヘルニアとは限りません。

目立たない鼠径ヘルニアのほか、股関節の病気、スポーツに関連したグロインペイン症候群、尿路結石、精巣や精巣上体の病気などでも、足の付け根付近に痛みが出ることがあります。

痛む場所や動作との関係、排尿時の痛みや血尿などの尿の症状、陰嚢の腫れや痛みは、原因を考える手がかりになります。

ただし、症状だけで確定診断はできないため、痛みが続く場合は医療機関で原因を確かめてください。

見た目に膨らみがない鼠径ヘルニアもある

鼠径ヘルニアが小さい場合や、診察時に組織が飛び出していない場合などは、見た目に膨らみが目立たないことがあります。

このような場合でも、足の付け根に痛みや違和感を覚える人がいます。

膨らみが見えないという理由だけでは、鼠径ヘルニアを否定できません。

女性では膨らみを確認しにくく、男性に比べて診察だけでは判断が難しい場合があるとされています。

診察で判断がつかない場合は、医師の判断で超音波検査などの画像検査が検討されます。

検査の流れは、鼠径ヘルニアは何科を受診すればよいかを解説した記事で紹介しています。

ただし、膨らみのない足の付け根の痛みが、すべて目立たない鼠径ヘルニアによるものとは限りません。

股関節の病気による痛み

変形性股関節症や股関節唇損傷など、股関節の病気でも足の付け根に痛みが出ることがあります。

変形性股関節症は股関節の軟骨がすり減る病気で、鼠径部に痛みを感じることが多く、動き始めや運動時、長時間立った後などに痛みやすいとされています。

股関節唇損傷は、股関節のクッションの役割をする関節唇が傷つく状態で、痛みや引っかかり感が生じます。

股関節の病気では、股関節の動きが悪くなる、特定の方向に動かすと痛むといった点が、診察の手がかりになる場合があります。

ただし、こうした症状だけで診断はできません。

股関節の病気が疑われる場合は整形外科で診察を受け、必要に応じてX線検査やMRIなどの画像検査で状態を確認します。

スポーツによるグロインペイン症候群

グロインペイン症候群(鼠径部痛症候群)は、スポーツに関連して足の付け根周辺に痛みが出る状態の総称です。

内転筋の腱の障害、腸腰筋の機能障害、恥骨結合炎など、複数の筋肉や腱、関節の問題が含まれます。

安静にしていると痛みが落ち着き、運動を再開すると再び痛むことが多いのも特徴の一つです。

サッカーやラグビー、バスケットボールなど、蹴る動作や急な方向転換を繰り返す競技でみられ、なかでもサッカーでの発生が多いと報告されています。

運動中に足の付け根が痛む点は鼠径ヘルニアと似ていますが、起こる仕組みや関係する組織は異なる場合があります。

グロインペイン症候群は一つの原因による病名ではないため、どの組織に問題があるのかを医師に評価してもらう必要があります。

尿路結石や精巣・精巣上体の病気による痛み

尿管結石では、腰や背中を中心とした痛みが、下腹部から陰部にかけて広がる場合があります。

吐き気や嘔吐を伴うこともあり、尿検査では多くの場合に血尿が見つかります。

結石が尿管の下のほうにあると、足の付け根や精巣のあたりまで痛みが響く人もいます。

精巣上体炎は、精巣の横にある精巣上体に炎症が起こる病気で、陰嚢の痛みや腫れが生じ、発熱やだるさを伴うこともあります。

膀胱や尿道、前立腺の感染が広がって起こるのが一般的です。

性感染症が原因の場合は、尿道炎や膀胱炎などの症状が先にみられることがあります。

精巣捻転は、精巣がねじれて血流が途絶える病気で、突然の強い陰嚢の痛みが特徴です。

陰嚢の痛みではなく、下腹部や足の付け根のはっきりしない痛みとして始まり、徐々に陰嚢へ広がる場合もあります。

血流が途絶えた状態が続くと精巣が壊死するおそれがあり、緊急手術の対象となります。

陰嚢が突然強く痛んだ場合は様子を見ず、夜間や休日でもすぐに医療機関を受診してください。

尿路結石や精巣・精巣上体の病気が疑われる場合は、泌尿器科などで診察を受け、尿検査や超音波検査、CTなどの画像検査で原因を確認します。

様子を見ずに受診したい痛みの変化

鼠径ヘルニアの痛みが変化したときは、変化の仕方によって、急いで受診すべき場合と、通常の外来で相談すればよい場合に分かれます。

急を要するのは、それまで戻っていた膨らみが戻らなくなり、急に強く痛む場合です。

膨らみが急に硬くなって戻らなくなった状態は「嵌頓(かんとん)」と呼ばれ、緊急手術が必要になることがあります。

一方、痛みが続いている、少しずつ強くなっているといった変化は、早めに外来で相談したい状態です。

膨らみが戻らず急に強く痛む場合は速やかに受診する

これまで横になると戻っていた膨らみが急に戻らなくなり、強い痛みが出た場合は、すぐに医療機関を受診してください。

膨らみが赤や紫、黒っぽい色に変わる、押すと強く痛むといった変化も、急いで診察を受けたいサインです。

吐き気や嘔吐、お腹の張り、強い腹痛を伴うときは、飛び出した腸の血流が妨げられている可能性があり、緊急手術の対象になります。

このような場合は救急外来を受診し、痛みで動けない、嘔吐を繰り返すといった状態であれば119番通報で救急車を呼びましょう。

強い痛みがなくても、膨らみが急に戻らなくなった場合は、早めに受診してください。

痛みの強さだけでは、安全な状態かどうかを判断できません。

自分で無理に押し戻そうとせず、そのままの状態で医療機関に向かうことが勧められます。

痛みが続く、または徐々に強くなる場合は医療機関に相談する

足の付け根の痛みが続いている場合や、以前より痛みが強くなっている場合は、医療機関で原因を確認することが勧められます。

歩く、仕事をする、家事をするといった日常の動作に痛みが影響している場合も、受診を考える目安になります。

痛みが続く原因は鼠径ヘルニアとは限らず、股関節や筋肉、神経の病気が関係していることもあります。

自己判断で原因を決めつけず、診察で評価を受けてください。

少しずつ変化する痛みは、膨らみが戻らないなどの急を要する変化がなければ、通常の外来で相談できる場合が多いと考えられます。

鼠径ヘルニアが疑われる場合の受診先は、外科や消化器外科が一般的です。

痛みがあるときに気をつけたいこと

痛みがあるときは、痛み止めの使い方と運動による体への負担に注意してください。

痛み止めや安静で痛みが和らぐことはあっても、腹壁の弱い部分がふさがるわけではなく、鼠径ヘルニアそのものの治療にはなりません。

成人の鼠径ヘルニアは自然に治ることはなく、根本的な治療には手術が必要とされています。

どの程度まで活動してよいか、薬をどう使うかは、症状や持病、体の状態によって異なるため、具体的な判断は医師に相談しましょう。

痛み止めを自己判断で使い続けない

市販の痛み止めを使うと一時的に痛みが和らぐ場合はありますが、鼠径ヘルニアそのものを治す薬ではありません。

痛みが軽くなっても、腹壁の弱い部分や飛び出している組織がなくなったわけではないのです。

薬で症状を抑え続けると、受診のタイミングが遅れたり、痛みの強まり方の変化に気づきにくくなったりするおそれがあります。

痛みが続くときは漫然と飲み続けず、医療機関で原因を確認してください。

痛み止めは種類によって使用上の注意が異なります。

胃腸や腎臓、肝臓の病気、ぜんそくなどの持病がある人や、ほかの薬を飲んでいる人は、使う前に医師や薬剤師に相談しましょう。

膨らみが戻らず急に強く痛む場合は、薬で様子を見ずに「様子を見ずに受診したい痛みの変化」の項目を確認してください。

痛みが出る運動は控えて医師に相談する

筋力トレーニングやランニング、ゴルフなどで足の付け根に痛みが出る場合は、無理に続けず、負荷を減らしてください。

痛みを我慢して運動を続けることは避け、どの動作で、どのくらいの負荷をかけたときに痛むのかを把握したうえで医師に相談しましょう。

ただし、日常の動作や軽い運動まで、すべて控える必要があるとは限りません。

どの程度まで活動してよいかは症状によって異なるため、医師の判断を踏まえて活動量を調整します。

運動を控えると痛みが和らぐことはあっても、鼠径ヘルニアそのものが治るわけではありません。

痛みの原因や治療の必要性は、医療機関で確認する必要があります。

手術後に残る痛みの経過

鼠径ヘルニアの手術後には、傷の周囲などに一時的な痛みが出ることがあり、多くは回復とともに軽くなります。

手術後の不快感は一般に2か月ほどで治まるとされる一方、一部の人では3か月を超えて痛みが続く場合があります。

長引く痛みには、手術部位を通る神経への影響や、補強に使う人工の網(メッシュ)の縮み、慢性的な炎症などが関係するとされ、原因は人によって異なります。

手術後の痛みは時間とともに軽くなることが多い

手術後には、切開した部分や手術で扱った組織の周囲に、痛みや違和感、つっぱり感が出ることがあります。

一般的には、組織の回復とともに痛みは少しずつ軽くなります。

回復の速さや痛みの程度には個人差があり、鼠径部を切開する手術か腹腔鏡手術かといった手術方法や、体の状態によっても経過は異なります。

同じ日数で全員の痛みが消えるわけではないため、日数だけで回復の良し悪しを判断することはできません。

一方、手術後に痛みが急に強くなった場合や、発熱、傷の強い腫れや赤み、傷からの膿などを伴う場合は、傷の感染や血のかたまり(血腫)などが起きている可能性があります。

このような変化があるときは、手術を受けた医療機関に連絡してください。

手術後3か月以上続く痛みは医師に相談する

手術後3か月以上たっても痛みが続く場合は、手術を受けた医療機関に相談することが勧められます。

術後に長引く痛みには、手術部位を通る神経への刺激や、周囲の組織の変化など、複数の原因が関係する場合があります。

原因を調べる際には、ヘルニアが再発していないかどうかも確認します。

国際的な専門家の定義では、手術後3か月以上続き、本人が中等度以上と感じ、日常生活に影響する痛みを「鼠径部ヘルニア術後慢性疼痛」としています。

期間だけで判断するのではなく、痛みの強さや日常生活への影響なども含めて、医師が評価します。

痛みが強い場合や悪化している場合は、3か月を待たずに相談してかまいません。

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この記事を監修した人


日本外科学会専門医/日本外科学会指導医/日本消化器外科学会認定医/日本ヘルニア学会鼠径部ヘルニア習得医
年間1000人以上の鼠径ヘルニア手術を担当および監修。安全で体へのダメージや再発が非常に少ない術式〈単孔式腹腔鏡下鼠径(そけい)ヘルニア根治術(SILS-TEP法)〉を行う日本有数のドクター。
外科医向けの鼠径ヘルニア手術の教科書を多数執筆する他、主な著書に『1日で治せる 鼠径ヘルニア読本』 合同出版/2024年2月刊/『ヘルニアの外科』(共著) 南江堂/2024年10月刊などがある。

Gi外科クリニック理事長・医師 池田 義博

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鼠径ヘルニア専門クリニック「Gi外科クリニック」では、岡山院(岡山市)、京都院(京都市四条烏丸)、阪神院(西宮市西宮北口)で中四国、関西を中心に鼠径ヘルニアの患者さんを治療しています。

鼠径ヘルニアという病気は、放置しておくと時に命に危険が及ぶ「嵌頓(かんとん)」を起こす可能性があります。
そのため、鼠径ヘルニアの症状がある場合は痛みの有無に関わらず、早期治療をおすすめします。

鼠径ヘルニアの症状がある方はお気軽に当院を受診ください。

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