鼠径ヘルニア完全ガイド

鼠径ヘルニア

鼠径ヘルニアは何科を受診すればいい?外科での診察と検査の流れ

足の付け根の膨らみから鼠径ヘルニアが疑われる場合、成人は外科または消化器外科を受診します。

痛みがあまりなく、何科へ行けばよいのか、受診したら何をされるのかが分からないまま、受診を先延ばしにしている人もいるはずです。

この記事では、外科・消化器外科が受診先になる理由と、ヘルニア外来やかかりつけ医からの紹介といった受診方法、初診で受ける問診・視診・触診の流れをまとめました。

受診先と当日の診察内容を事前に把握でき、医師に伝える情報を整理したうえで受診に臨めます。

鼠径ヘルニアは外科や消化器外科を受診する

足の付け根の膨らみから鼠径ヘルニア(脱腸)が疑われる場合、成人の主な受診先は外科または消化器外科です。

鼠径ヘルニアは、足の付け根にあたる鼠径部の腹壁の弱い部分から、腸や脂肪組織などが皮膚の下へ押し出される病気を指します。

出口となる腹壁のすき間は薬や運動では閉じないため、根本的な治療には手術が必要です。

受診の方法は1つではありません。

近くの外科・消化器外科を直接受診するほか、ヘルニア外来を設けた医療機関を探す方法や、かかりつけ医に相談して紹介を受ける方法もあります。

外科が受診先になるのは手術で治療する病気だから

鼠径ヘルニアを外科が担当するのは、腹壁の弱くなった部分を修復する手術が根本的な治療法だからです。

日本ヘルニア学会の「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン2024」作成委員長への取材記事でも、鼠径部ヘルニアの治療は現在も外科手術が一般的と説明されています。

鼠径ヘルニアは、筋肉や筋膜でできた腹壁の構造に生じる病気です。

飛び出した腸や脂肪を押し戻しても出口となるすき間は残るため、市販薬や体操では治りません。

外科や消化器外科では、診察や検査で鼠径ヘルニアかどうかを確認します。

そのうえで、症状の程度、膨らみの大きさ、持病や全身状態をもとに、手術の必要性と時期を判断するのが外科医の役割です。

ただし、外科を受診した時点で手術が決まるわけではありません。

症状が軽い場合や、持病によって手術の負担が大きい場合などは、すぐに手術をせず経過をみることもあり、治療方針は医師と相談して決めていきます。

手術以外の選択肢が検討される条件は、「鼠径ヘルニアの初期症状」の記事で説明しています。

ヘルニア外来を設けている医療機関もある

一般の外科や消化器外科に加えて、「ヘルニア外来」「鼠径ヘルニア外来」といった名称の専門外来を設けている医療機関もあります。

専門外来では、鼠径ヘルニアをはじめとする腹壁のヘルニアについて、診察、検査、治療方針の相談をまとめて受け付けている場合があります。

診療内容や受付方法は、医療機関ごとに異なります。

受診前に公式サイトや電話で、次の点を確認してください。

  • 対象としている疾患
  • 診療日と診療時間
  • 予約が必要かどうか
  • 紹介状が必要かどうか

専門外来は、特定の病気の診療を担当する窓口を示す名称にすぎません。

「ヘルニア外来」と掲げていることだけで、診療の質や治療成績が保証されるわけではない点に注意が必要です。

専門外来がない医療機関でも、鼠径ヘルニアは外科・消化器外科で日常的に診療されています。

かかりつけの内科から外科を紹介してもらう方法もある

外科を直接受診することに抵抗がある場合や、受診先を決められない場合は、かかりつけの内科などに相談する方法があります。

かかりつけ医は、膨らみの様子や既往歴、服用中の薬を確認します。

外科での診療が必要と判断すれば、外科や消化器外科への紹介状(診療情報提供書)を作成してもらえる場合があります。

紹介状には症状の経過や持病、服薬の情報が記載されるため、紹介先の医師が受診前の状況を把握できます。

紹介状がなくても受診できる医療機関は少なくありません。

一方、一定規模以上の対象病院では、紹介状を持たずに外来を受診すると、原則として3割負担などの通常の自己負担とは別に「特別の料金」(選定療養費)が徴収されます。

受診予定の病院が対象かどうかは、病院の公式サイトなどで確かめておきましょう。

膨らみが急に戻らなくなった、強い痛みが続くといった変化がある場合は、紹介を待たずに、後述の「夜間や休日に膨らみが戻らなくなったときの受診先」を確認してください。

外科の初診で受ける診察の流れ

外科の初診では、問診、視診、触診を組み合わせて、膨らみが鼠径ヘルニアによるものかを調べます。

鼠径ヘルニアの膨らみは、お腹に圧力がかかる立った姿勢や力んだときに現れ、横になると小さくなることがあります。

そのため、膨らみが出る状況や姿勢による変化が、診察の手がかりです。

一方で、足の付け根の膨らみは、リンパ節の腫れや脂肪腫など、鼠径ヘルニア以外の原因でも起こります。

医師は診察で得た情報をもとに、追加の検査が必要かどうかを判断します。

診察の内容や順番は、医療機関や症状の程度によって異なります。

問診で膨らみに気づいた時期や変化を伝える

問診で医師が確認するのは、足の付け根の膨らみにいつ気づいたか、症状がどのくらい続いているか、膨らみの大きさが変わってきたかといった点です。

膨らみの経過は、病状の進み具合や手術時期を検討する材料になります。

膨らみや違和感が出やすい場面について質問される場合もあります。

たとえば、長時間の立ち仕事、重い物を持つ作業、咳、排便時のいきみなど、お腹に力が入る場面で膨らみが目立つかどうかです。

過去の鼠径ヘルニアの治療歴、腹部や骨盤内の手術歴、持病、服用中の薬も伝えてください。

これらの情報は、再発かどうかの判断や、手術方法・麻酔の検討に関わります。

血液を固まりにくくする薬(抗血栓薬)を飲んでいる場合は、手術前に服薬の調整が必要になることがあるため、自己判断で中止せず医師に相談しましょう。

症状を細かく覚えていなくても、受診に問題はありません。

わかる範囲で伝えれば、医師が質問をしながら必要な情報を確認していきます。

立った姿勢と横になった姿勢で膨らみを確認する

鼠径ヘルニアの診察では、立った姿勢と横になった姿勢の両方で鼠径部を確認することがあります。

立つとお腹の中の圧力(腹圧)が下腹部にかかり、腸や脂肪組織を腹壁の弱い部分から外へ押し出す方向に力が加わるためです。

立った状態で膨らみがはっきりし、仰向けになると小さくなる、あるいは消えるといった変化は、鼠径ヘルニアを考える手がかりになります。

医師は鼠径部の周囲を観察し、左右差や膨らみの範囲も確かめます。

必要に応じて、医師の指示で咳をしたり、お腹に軽く力を入れたりして、腹圧が加わったときの膨らみの変化を観察する場合もあります。

ただし、膨らみは時間帯や活動量によって出たり引っ込んだりするため、診察時には出ていないこともあります。

診察時に膨らみがみられないことだけで、鼠径ヘルニアは否定できません。

自宅で膨らみが出たときに写真を撮っておけば、医師に状態を伝える材料になります。

触診で膨らみの位置や硬さ、戻り方を調べる

触診では、医師が鼠径部に手を当てて、膨らみの位置、大きさ、硬さ、周囲の状態を確認します。

男性の場合、陰嚢の皮膚の上から指を当て、鼠径管の出口付近を確かめることもあります。

膨らみが押すと戻るかどうか、触れたときや押したときに痛みがあるかどうかも、患者の状態に合わせて慎重に調べる項目です。

膨らみの位置は、鼠径ヘルニアと大腿ヘルニアの区別や、リンパ節の腫れなど別の病気との見分けにも関わります。

ただし、膨らみが小さい場合や皮下脂肪が厚い場合などは、触診だけで判断するのが難しいことがあります。

膨らみが硬く戻らず、強い痛みを伴う場合は、飛び出した腸などが締めつけられて戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」が疑われます。

嵌頓が疑われる状態で無理に押し戻すと、腸を傷める可能性があります。

自分で押し込もうとせず、医師に緊急性を判断してもらってください

鼠径ヘルニアの診断に用いられる検査

鼠径ヘルニアの診断は、問診や視診・触診といった身体診察が基本です。

身体診察で判断が難しい場合や、詳しい状態を確かめたい場合には、必要に応じて画像検査を追加します。

画像検査の中で選ばれることが多いのは、体への負担が少ない超音波検査(エコー検査)です。

超音波検査でも判断がつかない場合や、ほかの病気との区別が必要な場合などには、CT検査やMRI検査が検討されます。

どの検査を行うかは膨らみの有無や症状、診察の結果によって変わり、すべての患者が同じ検査を受けるわけではありません。

診察だけで判断できる場合は画像検査を行わないこともある

足の付け根に典型的な膨らみがあり、問診や視診・触診の結果から鼠径ヘルニアと判断できる場合は、画像検査を行わずに診断することもあります。

立つと膨らみ、横になると戻るといった特徴がはっきり確認できれば、身体診察だけで診断の根拠がそろうためです。

画像検査を行わないことは、診察が不十分という意味ではありません。

医師は、検査で得られる情報が診断や治療方針の決定に役立つかどうかを考えたうえで、画像検査の必要性を判断しています。

一方、次のような場合には画像検査が判断の助けになります。

  • 診察時に膨らみが確認できない
  • 膨らみが小さい、または皮下脂肪が厚く触診で判断しにくい
  • リンパ節の腫れや脂肪腫など、ほかの病気との区別が必要
  • 痛みはあるが、膨らみとの関係がはっきりしない

画像検査を受けるかどうかが気になる場合は、診察後に医師へ検査の必要性を尋ねてみてください。

超音波検査で膨らみの位置や中身を調べる

超音波検査は、ゼリーを塗った皮膚の上に検査用の機器(プローブ)を当て、超音波の反射を利用して鼠径部の内部を画像にする検査です。

放射線を使わず痛みもほとんどないため、診察から続けて行われることがあります。

この検査で確認するのは、膨らみの中に腸や脂肪組織などが含まれているか、ヘルニアが疑われる位置から組織が飛び出しているかといった点です。

膨らみの位置がわかれば、鼠径ヘルニアと大腿ヘルニアの区別や、リンパ節の腫れなど別の病気との見分けにも役立ちます。

画像をその場で見ながら観察できる点も、超音波検査の特徴です。

必要に応じて、立った姿勢やお腹に力を入れた状態で観察し、腹圧がかかったときの組織の動きを確かめます。

ただし、超音波検査は客観性や再現性に課題が指摘されており、結果は検査を担当する人の経験や検査時の条件に左右されます。

そのため、超音波検査で異常が見つからなかった場合でも、鼠径ヘルニアを否定できるとは限りません。

診断が難しい場合はCT検査やMRI検査を検討する

診察や超音波検査だけでは診断が難しい場合や、ほかの病気との区別が必要な場合などに、CT検査やMRI検査が検討されます。

CT検査は、X線を使って腹部や鼠径部の断面画像を撮影する検査です。

組織の位置や状態を広い範囲で確認でき、飛び出した腸が戻らなくなって腸閉塞などの合併症が疑われる場合にも、お腹の中の状態を調べる手段となります。

なお、仰向けで撮影する通常のCT検査では鼠径ヘルニアの診断精度が低いことが示されており、撮影方法を工夫している医療機関もあります。

MRI検査は、強い磁場と電波を使って体の内部を画像にする検査で、筋肉や脂肪などの軟らかい組織の違いを見分けるのに適しています。

鼠径部の痛みが続くのに、診察や超音波検査で原因が確認できない場合などに検討されることがあります。

検査ごとに注意点も異なります。

CT検査では、少量の放射線被ばくを伴います。

MRI検査は、ペースメーカーなどの医療機器や体内の金属の種類によって受けられない場合があるため、該当する人は事前に医師や検査担当者へ申し出てください。

女性や子どもが鼠径ヘルニアを疑ったときの受診先

鼠径ヘルニアの受診先は、年齢によって変わります。

成人であれば、女性も男性と同じく外科や消化器外科が主な受診先です。

一方、子どもの場合は、子どもの外科的な病気を専門に扱う小児外科が中心になります。

子どもの鼠径ヘルニアは成人とは発症の仕組みが異なり、成長や発達を考慮した診療が求められるためです。

近くに小児外科がない場合でも、かかりつけの小児科を通じて小児外科につながる方法があるので、受診先が見つからないまま様子をみ続ける必要はありません。

女性も婦人科より外科が主な受診先となる

女性でも、足の付け根の膨らみなどから鼠径ヘルニアが疑われる場合は、外科や消化器外科が主な受診先になります。

鼠径ヘルニアは腹壁にすき間ができる病気で、診断と手術による治療は外科の担当領域です。

婦人科は、子宮や卵巣など女性の生殖器の病気を扱う診療科にあたります。

下腹部の症状から婦人科を思い浮かべる人もいますが、鼠径ヘルニアの手術は一般的に婦人科では行われていません。

ただし、女性の下腹部痛や鼠径部の違和感には、婦人科の病気が関係している場合もあります。

すでに婦人科を受診していて鼠径ヘルニアが疑われたときは、婦人科の医師に相談すれば、必要に応じて外科を紹介してもらえます。

また、女性では、鼠径ヘルニアよりやや下側に膨らみが出る大腿ヘルニアとの区別が必要になる場合もあります。

膨らみの位置による見分け方は、「鼠径ヘルニアの初期症状」の記事で説明しています。

子どもは小児外科で診察を受ける

乳児や幼児、小学生など、子どもの鼠径ヘルニアが疑われる場合は、小児外科が主な受診先です。

鼠径ヘルニアは、小児外科で扱う病気の中で最も多い病気とされています。

子どもの鼠径ヘルニアのほぼすべては、本来は閉じるはずの腹膜の通り道(腹膜鞘状突起)が生まれつき開いたまま残ることで起こります。

加齢などで腹壁が弱くなって起こることが多い成人の鼠径ヘルニアとは成り立ちが異なり、治療の考え方にも違いがあります。

小児外科では、子どもの年齢や体格、発育、全身状態を考慮しながら診察を進めます。

診察時に膨らみが出ていなければ、保護者が自宅で撮影した写真や、膨らみが出る状況の説明も診断の参考になります。

診断がついたあとの治療方針も、子どもの状態に合わせて検討されます。

小さな子どもは症状を言葉で伝えられないため、子どもの診察に慣れた小児外科で相談すると、状態に応じた判断を受けられます。

近くに小児外科がない場合はかかりつけの小児科に相談する

小児外科は、主に大学病院やこども病院、地域の中核病院などに設けられており、住んでいる地域によっては近くにないこともあります。

その場合は、まずかかりつけの小児科に相談する方法があります。

小児科では膨らみの様子や子どもの全身状態を確認し、鼠径ヘルニアが疑われれば、小児外科のある病院への紹介を検討してもらえます。

紹介状があれば、紹介先の医師が受診前の経過を把握できます。

加えて、一定規模以上の病院を紹介状なしで受診した際に徴収される特別の料金もかかりません。

紹介先の医療機関によって、診療している病気や対象年齢、予約の方法は異なります。

受診前に、病院の公式サイトや電話で確認しておきましょう。

膨らみが急に戻らなくなった、子どもが泣き止まない、吐いているといった変化がある場合は、紹介を待たずに、後述の「夜間や休日に膨らみが戻らなくなったときの受診先」を確認してください。

泌尿器科や整形外科を受診した場合の対応

鼠径ヘルニアは、陰嚢の腫れや足の付け根の痛みとして気づかれることもあり、最初に泌尿器科や整形外科を受診する人もいます。

その場合でも、診察の結果から鼠径ヘルニアが疑われれば、必要に応じて外科や消化器外科へ紹介されるのが一般的な流れです。

ただし、泌尿器科や整形外科で鼠径ヘルニアを診られないわけではありません。

鼠径ヘルニアの可能性を指摘したうえで外部へ紹介する医療機関もあれば、院内の外科と連携して診療を進める医療機関もあり、対応は医療機関ごとに異なります。

陰嚢の腫れで泌尿器科を受診すると外科を紹介されることがある

男性の場合、陰嚢の腫れや精巣のまわりの違和感をきっかけに、最初に泌尿器科を受診する人もいます。

鼠径ヘルニアでは、飛び出した腸や脂肪組織が鼠径部から陰嚢まで下りてきて、陰嚢が腫れたように見えることがあるためです。

泌尿器科では、精巣や陰嚢の周辺に起こる病気を調べる過程で、腫れの原因として鼠径ヘルニアが疑われる場合があります。

診察の結果、鼠径ヘルニアの診断や手術による治療が必要と判断されれば、外科や消化器外科を紹介されることがあります。

医療機関によっては、泌尿器科でそのまま診療を続ける場合もあるでしょう。

陰嚢の腫れで泌尿器科を選んだことは、受診先を間違えたことにはなりません。

泌尿器科から外科を紹介されて、鼠径ヘルニアの治療につながるケースもあります。 

陰嚢水腫など、陰嚢が腫れるほかの病気との見分け方は、「鼠径ヘルニアの初期症状」の記事で説明しています。

足の付け根の痛みで整形外科を受診すると外科を紹介されることがある

足の付け根に痛みがあると、股関節や筋肉の問題を考えて整形外科を受診する人もいます。

足の付け根の痛みは、股関節の病気や筋肉・腱の損傷など、骨や関節に関わる原因でも起こるためです。

整形外科では、診察やX線検査などで股関節や骨、筋肉の状態を調べます。

その結果、骨や関節の病気だけでは痛みを説明できず、鼠径部の膨らみなどから鼠径ヘルニアが疑われることもあります。

その場合は、必要に応じて外科や消化器外科へ紹介される流れです。

一方、整形外科の診察で股関節や筋肉に痛みの原因が見つかる場合もあり、すべての人が外科へ紹介されるわけではありません。

原因がはっきりしないまま痛みが続く場合や、立ったときに足の付け根が膨らむ場合は、外科での診察について整形外科の医師に相談してみてください。

夜間や休日に膨らみが戻らなくなったときの受診先

鼠径ヘルニアの膨らみが急に戻らなくなった場合は、夜間や休日であっても、通常の外来の再開を待たずに医療機関を受診してください。

飛び出した腸などが締めつけられて戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」が起きている可能性があり、時間がたつと腸の血流が悪くなるおそれがあるためです。

通常の外来が休診している時間帯は、救急外来のある医療機関が受診先になります。

受診を迷う場合は電話相談窓口も利用できますが、緊急性が明らかに高い場合は、相談を挟まず119番に通報してください。

救急外来のある医療機関を受診する

膨らみが急に戻らなくなったときは、夜間や休日でも救急外来のある医療機関で速やかに診察を受けてください。

嵌頓が疑われる場合、医師は膨らみを手で戻せるかを判断します。

戻せない場合や腸の血流障害が疑われる場合は、緊急手術が必要になることがあります。

夜間や休日の診療体制は医療機関によって異なり、救急外来があっても、その時間帯に外科医が対応できるとは限りません。

可能であれば、受診前に医療機関へ電話で症状を伝え、受け入れが可能かを確認しておきましょう。

受診した医療機関で外科的な処置が難しいときは、外科診療や緊急手術に対応できる医療機関へ紹介や搬送が行われる場合もあります。

強い痛みで動けない、吐き気や嘔吐が続く、顔色が悪いといった重い症状がある場合は、自力で移動しようとせず、119番で救急車を呼んでください。

すぐに受診すべきか迷うときは#7119などの相談窓口を利用する

#7119(救急安心センター事業)は、救急車を呼ぶべきか、今すぐ医療機関を受診すべきか迷ったときに、医師・看護師・救急救命士から電話で助言を受けられる窓口です。

相談内容に応じて、応急手当の方法の助言や受診できる医療機関の案内が行われ、緊急性が高いと判断されれば119番への転送などの対応につながります。

ただし、#7119は全国どこでも利用できるわけではありません。

実施地域は限られており、24時間対応の地域がある一方で、夜間や休日のみ受け付ける地域もあります。

また、対象をおおむね15歳以上としている地域も多く、#7119以外の番号で救急電話相談を行っている地域もあります。

住んでいる地域の窓口と受付時間は、消防庁や自治体のサイトで事前に確認しておいてください。

子どもの症状で迷ったときは、子ども医療電話相談(#8000)を利用できます。

#8000は、休日・夜間の子どもの症状について、小児科医師や看護師に電話で相談できる窓口です。

#8000の受付時間も、都道府県によって異なります。

激しい痛みが続く、繰り返し吐く、意識がもうろうとしているなど、緊急性が明らかに高い場合は、電話相談を挟まずに119番へ通報してください。

初診の前に準備しておきたいこと

鼠径ヘルニアの初診前に、症状の経過と持ち物を整理しておくと、限られた診察時間の中で医師に必要な情報を伝えられます。

鼠径ヘルニアの膨らみは日によって出方が変わり、診察時には確認できないこともあるため、普段の状態を示す情報が診断の手がかりになるからです。

準備しておきたいのは、膨らみが現れる状況のメモ、膨らみが出ているときの写真、お薬手帳や過去の検査結果などです。

ただし、準備が整っていなくても受診はできます。

膨らみが戻らない、強い痛みがあるといった場合は、準備よりも早く医療機関を受診することを優先してください。

膨らみが現れる時間帯や状況を記録しておく

膨らみに気づいた状況をメモしておくと、問診で症状を具体的に伝えられます。

鼠径ヘルニアの膨らみは、お腹に力が入る動作や立っている時間の長さによって現れ方が変わることがあり、記憶だけでは経過を正確に説明しにくいためです。

記録しておきたい項目は、次のとおりです。

  • 膨らみに初めて気づいた時期
  • 膨らみが現れやすい時間帯
  • 立ち仕事、重い物を持つ作業、運動、咳との関係
  • 横になったときに小さくなるか、消えるか
  • 痛みや違和感の有無と、その程度

膨らみの大きさや違和感が以前と比べて変わってきた場合も、わかる範囲で書き添えておけば参考になります。

記録の方法は、スマートフォンのメモ機能など、続けやすいもので十分です。

なお、記録のために強くいきんだり、膨らみが出る動作をわざと繰り返したりする必要はありません。

普段の生活の中で気づいたことを書き留めておきましょう。

診察時に膨らみが消える場合に備えて写真を撮っておく

膨らみが出ているときの写真を撮っておくと、診察時に膨らみが消えていても、普段の状態を医師に見せられます。

鼠径ヘルニアの膨らみは、横になったり力を抜いたりすると小さくなることがあり、受診したときには目立たなくなっている場合があるためです。

撮影は、立った姿勢など膨らみが自然に出ているときに、無理のない範囲で行ってください。

両側の足の付け根が写る角度で撮ると、膨らみの位置や左右差を比較できます。

一方、必要以上に患部を露出する必要はありません。

下着を少しずらす程度で膨らみの位置がわかれば足りるので、撮影した写真の保存場所や共有の範囲にも注意しましょう。

写真は、医師が状態を把握するための補助的な資料という位置づけです。

写真だけで鼠径ヘルニアと診断できるわけではなく、診断は医師による診察を受けたうえで行われます。

お薬手帳や過去の検査結果を持参する

初診時には、次のものを持参すると、受付から診察までの手続きが滞りなく進みます。

  • マイナ保険証や資格確認書など、健康保険の資格確認に必要なもの
  • お薬手帳など、服用中の薬がわかるもの
  • 紹介状(診療情報提供書)がある場合はその書類
  • 過去の検査結果や、ほかの医療機関でもらった資料

腹部や骨盤内の手術を受けたことがある場合や、鼠径部の超音波検査などを受けたことがある場合は、当時の診療情報や検査結果が診察の参考になります。

手元に資料がなければ、手術を受けた時期や医療機関名を伝えるだけでも構いません。

服用中の薬の情報も、忘れずに医師へ伝えてください。

血液を固まりにくくする抗凝固薬や抗血小板薬などは、将来手術を検討する際に、出血への影響を確認する必要があるためです。

ただし、手術に備えて自己判断で薬を中止してはいけません。

薬の変更や休薬が必要かどうかは、処方している医師と外科医が相談して判断します。

医療機関を選ぶときに確認したいこと

鼠径ヘルニアの診療を受ける医療機関を選ぶ際は、手術への対応、手術の体制、治療方針の説明、通院のしやすさを確認しておくと判断材料になります。

医療機関によって、手術まで自院で行うか、日帰りか入院か、どのような術式や麻酔を扱うかが異なるためです。

確認には、医療機関の公式サイトの診療案内や、電話での問い合わせが役立ちます。

どの医療機関が合うかは、ヘルニアの状態や持病、仕事や家庭の事情によって変わります。

自分の状況に合う条件を確かめて選びましょう。

鼠径ヘルニアの手術を行っているか

鼠径ヘルニアの診察に対応している医療機関でも、手術まで自院で行う場合と、必要に応じて別の医療機関へ紹介する場合があります。

外科を標榜するクリニックであっても、手術室や入院設備の有無などによって、自院で対応できる範囲は変わります。

診察から手術まで同じ医療機関で受けたい場合は、公式サイトの診療案内などで、鼠径ヘルニアの手術を行っているかを確認しておきましょう。

診療案内に記載がないときは、電話で問い合わせる方法もあります。

一方、手術を行っていない医療機関を受診しても、無駄になるわけではありません。

診察で鼠径ヘルニアかどうかを確かめ、治療方針の相談を受けたうえで、手術に対応できる医療機関を紹介してもらえる場合があります。

近くの医療機関で診断を受けてから手術先を決めるという進め方も、選択肢の1つです。

紹介先について希望があれば、紹介状を書いてもらう前に医師へ伝えておくとよいでしょう。

日帰り手術や入院手術に対応しているか

鼠径ヘルニアの手術は、手術当日に帰宅する日帰り手術で行われる場合と、入院して行われる場合があります。

日本ヘルニア学会の「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン2024」でも、成人の日帰り手術が項目の1つとして取り上げられています。

日帰り手術と入院手術のどちらに対応しているかは、医療機関ごとに異なります。

仕事を休める日数や家族の付き添いなど、生活の事情に合わせて予定を立てたい場合は、受診前に手術の体制を確認しておきましょう。

ただし、希望すれば誰でも日帰り手術を受けられるわけではありません。

日帰り手術が適しているかどうかは、ヘルニアの状態、年齢、持病、麻酔の方法、帰宅後に付き添える人がいるかといった条件をもとに医師が判断します。

日帰り手術と入院手術にはそれぞれ向いている患者や状況があり、どちらか一方が一律に優れているとはいえません。

自分の状態にどちらが合うかは、診察を受けたうえで医師と相談して決めてください。

手術方法や麻酔方法について相談できるか

鼠径ヘルニアの手術には、鼠径部を切開して腹壁のすき間をふさぎ補強する方法と、お腹に小さな穴を開けて腹腔鏡(お腹の中を映すカメラ)を使う方法があり、患者の状態に応じて選ばれます。

麻酔は、全身麻酔のほか、脊髄くも膜下麻酔(下半身の麻酔)や局所麻酔などが選択肢です。

ただし、腹腔鏡を使う手術は一般的に全身麻酔で行われるなど、使える麻酔は術式によって限られます。

実際に選べる方法は、患者の状態や持病、医療機関の設備や体制によっても変わります。

医療機関を選ぶ際は、次の点について説明を受けられるかを確認しておくと、治療方針を納得して決める助けになります。

  • 自院で対応している手術方法と麻酔方法
  • 自分の状態に合う方法と、その理由
  • 手術に伴う合併症などのリスク
  • 術後の痛みや日常生活への復帰の目安

どの手術方法や麻酔方法が合うかは、一人ひとりの状態によって異なります。

特定の方法がすべての人に向いているわけではないため、疑問点は遠慮せず担当医に尋ねてください。

通院のしやすさと術後の診療体制

鼠径ヘルニアの治療では、初診だけでなく、手術前の検査や説明、術後の診察などで複数回通院する場合があります。

そのため、医療機関を選ぶ際は、継続して通えるかどうかも確認しておきましょう。

通いやすさを判断するときは、次の条件が目安になります。

  • 自宅や職場からの距離と交通手段
  • 診療日と診療時間(平日夜間や土曜の診療があるか)
  • 予約の方法と、予約の取りやすさ

術後の診療体制も、確認しておきたい項目です。

手術後に痛みや腫れ、発熱などが現れたときの相談先や、診療時間外に連絡できる窓口の有無は、医療機関によって異なります。

術後の再診がいつ、何回程度予定されているかもあわせて確認すれば、仕事や家庭の予定を立てる際の参考になります。

公式サイトに記載がない場合は、初診時や手術の説明を受ける際に、医師や看護師へ尋ねてみてください。

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この記事を監修した人


日本外科学会専門医/日本外科学会指導医/日本消化器外科学会認定医/日本ヘルニア学会鼠径部ヘルニア習得医
年間1000人以上の鼠径ヘルニア手術を担当および監修。安全で体へのダメージや再発が非常に少ない術式〈単孔式腹腔鏡下鼠径(そけい)ヘルニア根治術(SILS-TEP法)〉を行う日本有数のドクター。
外科医向けの鼠径ヘルニア手術の教科書を多数執筆する他、主な著書に『1日で治せる 鼠径ヘルニア読本』 合同出版/2024年2月刊/『ヘルニアの外科』(共著) 南江堂/2024年10月刊などがある。

Gi外科クリニック理事長・医師 池田 義博

Gi外科クリニックへご相談ください

鼠径ヘルニア専門クリニック「Gi外科クリニック」では、岡山院(岡山市)、京都院(京都市四条烏丸)、阪神院(西宮市西宮北口)で中四国、関西を中心に鼠径ヘルニアの患者さんを治療しています。

鼠径ヘルニアという病気は、放置しておくと時に命に危険が及ぶ「嵌頓(かんとん)」を起こす可能性があります。
そのため、鼠径ヘルニアの症状がある場合は痛みの有無に関わらず、早期治療をおすすめします。

鼠径ヘルニアの症状がある方はお気軽に当院を受診ください。

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また受診はためらうけど症状が気になる方のための無料相談窓口も設けています。
無料相談窓口では、鼠径ヘルニアに詳しい当院の看護師がご対応致します。

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