そけいヘルニアの腹腔鏡手術ってどうするの?

腹腔鏡を用いた手術には2種類あります。まず一つ目は腹腔内(いわゆるお腹の中です)に入り、腹膜(内臓を包む膜です)を開けて腹壁を修復する方法(TAPP法と言います)です。近年の報告(2013年)では、鼠径ヘルニアの腹腔鏡下手術の約75%はこの方法です。

もう一つは、腹腔内には入らず、腹腔外で腹壁を修復する方法(TEP法と言います)です。こちらは約25%です。
通常の腹腔鏡下手術では3つの穴(1cm以下)を開けてカメラと専用の鉗子類を用いて操作を行います。

当院使用の手術器具

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(1)  フレキシブルファイバースコープ(先端が4方向100°に湾曲 フルハイビジョン 経5.4mm)
(2)  鉗子(径5mm)
(3)  超音波凝固切開装置(先端に超音波を発生させ組織を凝固切開する装置 径5mm)

当院使用の手術材料

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(1) ラッププロテクター(お臍の傷に装着し創を保護します)
(2) トロッカー(この筒の中にカメラや鉗子を通して操作します)
(3) ダイレーター(膨潤麻酔を注入する道具です)
(4) 手術用グローブ(グローブを工夫し、トロッカーを装着します)

当院使用のビデオシステム

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最先端のフルハイビジョン対応のシステムです。
術中の画像はこのモニターに鮮明に映し出されます。

当院の手術方法について

当院は鼠径部切開法も行いますが、ほとんど腹腔鏡下法、それもTEP法です(94.6%)。また、通常の3つの穴ではなく、お臍の中に1つだけ穴をあけて全ての操作を行う、単孔式という方法で手術を行います。なぜこの術式?、おまけに3つの穴を1つだけにする、やりにくそうな方法を選択するの?と疑問に思われる方もいらっしゃると思います。これには私なりのこだわりがあります。
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当院は日帰り手術のみを提供します。日帰り手術を可能とするには、低侵襲性(体へのダメージが少ないこと)と安全性がより一層担保される必要があると考えています。
腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術は低侵襲性から早期の社会復帰が可能と言われています。そして、鼠径ヘルニアそのものが、腹壁が弱くなって発生する病気です。よって腹腔内操作(内臓に触れてしまうお腹の中での操作)を必要とせず、腹壁内のみの操作で弱くなった部分を含む腹壁を広く補強できる術式であるTEP法、そして、より低侵襲化を目指した単孔式TEP法が最も適していると考え、第一選択術式として採用しています。

加えて、患者さんの術後の痛み対策として膨潤麻酔という方法も取り入れています。これは局所麻酔薬を薄めた液を手術操作部に段階的に注入しながら手術を進めていく方法です。追加操作ではありますが、この工夫を加えても手術時間は平均56.2分(38-95分)と多くは1時間以内に終了します。

実際の手術風景

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お臍を切開した傷に手袋かぶせ、トロッカー(黄色い筒)を装着し、そこからカメラや鉗子を挿入します。
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モニターを見ながら操作します。フルハイビジョンで、組織の詳細な画像が観察可能です。
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《当院使用のメッシュ》
ヘルニア門(鼠径部に開いた穴)を塞ぐメッシュです。長年、手術で使用実績があり安全性が確立されたポリプロピレン製です。
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《当院使用のメッシュの固定具》
メッシュを適切な場所に展開することで腹壁を補強し、脱出を防ぎます。このメッシュがずれないように、腹壁に固定するのがこの道具です。
先端からスクリューのような留め具が出て固定します。